店舗レイアウトのコツ|業態別にゾーニング計画ポイントを紹介
店舗レイアウトのコツ|業態別にゾーニング計画ポイントを紹介
Column
2024.12.03
店舗計画の際には、「レイアウト」を意識すると成功しやすくなります。本記事では飲食店を筆頭に、業態別のゾーニング計画ポイントについてご紹介します。顧客心理や動線をしっかり考慮することで、売上につながる店舗計画を立ててみましょう。
店舗レイアウトのメリット
ここではまず、店舗レイアウト計画を行うメリットについて簡単にご紹介します。
売上増加につながる
店内のレイアウトを上手に設計することで、売上増加に大いに貢献できる可能性があります。具体的には、席の配置を工夫したり顧客動線の配慮を行ったりするのが一般的です。店内が狭すぎると居心地が悪くなり、一方で広すぎても収益性が低下するため、バランスを考慮することが重要です。
業務効率が上がる
店舗レイアウトは、業務効率改善につながります。たとえば飲食店の場合、キッチンと客席が近いとスタッフの動線が短くなり、料理の提供が迅速になります。これにより提供時間短縮や事故リスク軽減につながり、サービスの質が向上するのです。
また必要に応じてサービスステーションの配置やバックスペースの計画も合わせて行うと、スタッフの動きがスムーズになり、全体的な業務効率が向上します。スタッフが店内全体を見渡しやすくなることで、顧客の動向やニーズにスムーズに対応できます。
顧客満足度が向上する
店舗レイアウトが整っていると、顧客満足度の向上につながります。テーマに沿った内装や魅力的なディスプレイにすることで、→「テーマに沿った魅力的な内装にすることで」
SNSでの拡散効果が期待できる場合も多いです。最終的に、リピーターの増加や口コミによる新規顧客の獲得にも貢献できると考えられます。
店舗レイアウトはこう考える!ゾーニング計画の法則
ここでは、店舗レイアウトの基本的な考え方について整理しておきます。ゾーニングに関する法則に従って計画を立てることで、業務効率や顧客満足度がアップします。幅広い業態に活かせる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
「AIDMAの法則」を考慮する
AIDMA(アイドマ)の法則とは、お客様が製品やサービスを得るまでの心理的プロセスに関するマーケティング理論のことを指します。主に、下記5つのステップに分類されます。
- ①Attention(注意): お客様が製品やサービスに気付く段階。広告やSNS、口コミなどで消費者の注意を引くことが重要。
- ②Interest(関心): 製品やサービスに興味を持ち始める段階。詳細な情報や魅力的な特徴を提示することで、関心を引く。
- ③Desire(欲求): 製品やサービスを欲しいと感じる段階。商品の利点や価値を強調し、購買欲求を喚起する。
- ④Memory(記憶): 製品やサービスの情報を記憶に留める段階。印象的な広告やブランドの認知を強化することで、記憶に残るようにする。
- ⑤Action(行動):実際に店舗へ足を運ぶなど、具体的な行動を起こす段階。「購入・来店によって素晴らしい体験が得られる」という消費者心理が働く。
最近では「AIDMAの法則の考え方はもう古い」という意見もありますが、人間の行動心理の基本として参考になる部分は多いです。法則を応用することでお客様の注意を引き付けて関心を持たせ、購買欲求を喚起して購入・来店につなげましょう。
「中間領域」を設ける
「中間領域」とは、店舗と道路の中間的な機能を有する空間のことを指します。例えばカフェのオープンテラスや、飲食店メニューの立て看板を置いたスペース等が挙げられます。中間領域を設けることで店内の様子や雰囲気が分かりやすくなり、入店の心理的ハードルが下がるのがメリットです。
また中間領域をプロモーションエリアとして活用することで、新メニューや限定商品を効果的にアピールできます。顧客が自然に目にする場所に配置することにより、売上向上が期待できるのです。
そして店内を複数のゾーンに分けることで、異なるニーズに応じた空間を提供できる場合もあります。具体的にはプライバシーを重視して過ごしたいお客様と、賑やかな雰囲気を楽しみたいお客様に対して、それぞれ適切なゾーンを提供できます。
「通路幅・ゆとり」を意識する
適切な通路幅とスペースのゆとりを確保することで、お客様満足度やスタッフの業務効率が向上します。例えば飲食店の場合、ホールの通路は120cm以上確保するのが望ましいです。またキッチンやバックヤードでは75cm以上の幅があると、複数人がすれ違って通行できます。
十分な通路幅を確保することで、快適に移動できるようになります。特に家族連れや高齢者、車椅子を利用される方にとっては、重要なポイントです。またテーブル間にゆとりを持たせることにより顧客同士のプライバシーが保たれ、よりリラックスして食事を楽しめるようになります。
またスタッフが転倒したり衝突したりするリスクを減らせるので、安全な環境も整います。緊急時にも迅速に避難できるため、防災上のメリットも大きいです。
「客動線」を長くする
「客動線」とは、店舗内でお客様が移動する経路のことを指します。店舗の業態によって異なる場合がありますが、具体的には下記のような要素に分類できます。
- 入店経路: 顧客が店に入る際の経路
- 店内経路: 店内で顧客が移動する経路
- レジ経路: レジに向かう経路
- 退店経路: 利用後に店を出るための経路
スムーズで直感的な動線は余計なストレスを減少させ、快適な滞在時間につながります。しかしシンプルな動線にすることが必ずしも最適ではなく、特に物販店やスーパーマーケットでは動線が長い方が適しています。これは店内をより多く歩くことで、商品に目を向ける機会が増えることが理由です。衝動買いを促進する商品やプロモーション商品を戦略的に配置すれば、売上の増加が期待できます。
このように、業態やターゲット層に応じて動線計画を工夫するのがポイントです。ニーズを理解して柔軟な動線設計を心がけることで、効果的な店舗レイアウトを実現しましょう。
「マグネット売り場」を設置する
「マグネット売り場」とは、お客様を引き寄せるための売り場のことを指します。磁石のように興味を引き付けることが由来で、特売品やおすすめ商品が設置されます。売り場を戦略的に配置することで、店舗全体の売上や顧客満足度の向上につながるのです。
具体的には、各通路の突き当たりにマグネット売り場を配置します。また主通路沿いの棚や、棚の端も買い上げ率が高い場所です。マグネット売り場をうまく活用することで、店舗のブランドイメージを強化することもできます。例えば季節ごとのテーマや特別なイベントに合わせた装飾や商品陳列を行うと、販促に効果的です。
「ゴールデンライン」を意識する
「ゴールデンライン」とは、お客様が目にしやすい棚の高さのことを指します。このライン上に商品やディスプレイを配置することで関心を引きやすくなり、売上の増加につながります。具体的には、床面から110〜140cm程度の高さに設定されることが多いです。
店舗レイアウトにおいてゴールデンラインを意識することは、お客様の関心を引き、売上を増加させるために非常に効果的です。入口や主要通路、レジ付近など、最も頻繁に目にするエリアに注目商品を配置しましょう。視線の高さや視覚的な魅力にも配慮することで、効果的な店舗運営が実現できます。
ただしゴールデンラインは、ターゲットとする客層に応じて変更する必要があります。目が届きにくい箇所にはポップを設置するなど、店舗の状況に応じて工夫を施すことも重要です。
【店舗種類別】レイアウトの方法
ここでは、店舗レイアウトの方法についてご紹介します。主な店舗種類別にまとめているので、レイアウト計画時に参考にしてみてください。
飲食店・カフェ
カジュアルな飲食店やカフェの店舗レイアウトでは、入店の敷居を低くするのがポイントです。店頭にサンプルやメニュー表を設置するといった工夫をすることで、道行く人の興味を引きましょう。また回転率を上げるためには、個室席ではなくカウンター席を多めに配置するのが効果的です。そして座席間隔を狭くした方が、一度に多くのお客様が来店できます。さらに立地に応じてオープンテラス等を設ければ、集客効果が高まります。
一方で高級感のあるバーや料亭の場合、あえて店内の様子が分かりにくい設計にするのがおすすめです。入店の敷居を高くすることで想像をかき立て、特別感を演出しましょう。
また照明計画については、庶民的な飲食店では200lx程度の明るさを均等に確保するのが一般的です。しかし高級店の場合には、あえてメリハリを付けた計画の方が好まれます。例えば空間全体の照度は30lx程度に抑え、カウンターやテーブルの上だけ300lx確保するといったプランだと、印象的でドラマチックな雰囲気になります。
コンセプトに基づいた動線計画、席の配置、雰囲気作りだけでなく、設備の配置や照明計画についても考慮することで、成功する店舗運営が実現できます。
アパレル店
アパレル店の店舗レイアウトでは、ショーウィンドウが中間領域の役割を果たします。季節やプロモーションに応じた魅力的なウィンドウディスプレイを設置することで、通行人の関心を引きましょう。またサインや看板を設置し、店舗の存在をアピールするのも効果的です。
そして客動線を長くするために、あえてレジカウンターを店の奥に配置するのがおすすめです。お客様を自然に奥まで誘導し、購買意欲を高めましょう。またゾーニングでは商品カテゴリごとに場所を分け、商品を見つけやすくします。例えばメンズ、レディース、キッズ等でゾーン分けすると、快適なショッピング体験を提供しやすくなります。
さらに照明や色彩計画は、店内の雰囲気を大きく左右します。特に外部から見えるディスプレイエリアには、重点的に明るさを確保しましょう。アパレル店では季節に応じてディスプレイが変わることが多いため、角度を変更できるスポットライトで計画した方が便利です。
物販店
物販店の店舗レイアウトは、顧客の購買意欲を引き出して売上をアップするために重要です。まずは店舗のコンセプトやターゲット顧客を明確にし、それに基づいてデザインやレイアウトを計画しましょう。これにより、統一感のある魅力的な空間を作り出せます。
また物販店ではたくさんの種類の商品を陳列するため、カテゴリー別に分類して分かりやすく配置しましょう。季節やキャンペーンに応じてアイキャッチスペースを設ける等、買い物の楽しさを演出することも重要です。
大型の物販店の場合、回遊性を意識した店舗レイアウトも大切です。商品をゴールデンラインに合わせて配置することで、お客様の目に入りやすくなります。商品が売れる場所を意識してイベントスペースを設けるなど、売上につながる施策を実施してみましょう。
スーパーマーケット
スーパーマーケットの店舗レイアウトでは、店内を自然に回遊できるように動線を計画します。具体的には商品カテゴリごとにゾーンを分け、探している商品を見つけやすくします。例えば野菜・果物、肉・魚、乳製品、飲料、冷凍食品等によってゾーン分けをするのが一般的です。通路に関しては、ベビーカーや車いすでも問題なく通行できるように120~150㎝程度の幅を確保しておくと安心です。
また商品の陳列では、マグネット売り場やゴールデンラインの法則を意識したレイアウトがおすすめです。購入頻度の高い生鮮食品やプロモーションアイテムを入り口付近に配置して、購買意欲を高めましょう。
さらに照明についても、商品に合わせた計画が求められます。演色性の高い照明器具を使えば、同じ食材でもより美しく見せられます。場合によってはカラーフィルターを使用することで、肉や魚の色味を鮮やかに演出する方法もおすすめです。
クリニック・サロン
クリニックやサロンの場合、お客様の快適さやプライバシー、作業動線といった要素を考慮して設計する必要があります。受付エリア、施術エリア、動線、照明などを総合的に計画することで、快適な環境を実現しましょう。
まず受付は入り口からすぐに見える位置に設置し、スムーズに手続きできるようにします。周辺には待合スペースを設け、リラックスできるように計画します。椅子やソファの配置、雑誌やウォーターサーバーの設置も考慮するのがおすすめです。また動線に関しては、施術エリアと受付・待合エリアを明確に分けておくとスタッフがスムーズに移動しやすくなります。必要な備品や薬品などへのアクセスも便利にしておくと、業務効率化につながります。
従来のクリニックの照明では白い光色が多く採用されていましたが、明るすぎて落ち着かない印象になってしまうのが難点でした。そのため最近では、オレンジ色の「電球色」や中間の「温白色」といった光色が選ばれるケースが増えています。クリニックやサロンは他業態に比べて滞在時間が長くなるため、心理的に安心できる空間にすることが重要です。
まとめ
店舗レイアウトを工夫することで、売上アップや顧客満足度の向上といった効果が期待できます。計画の際には、ゾーニングの法則を意識することで成功しやすくなります。
しかし、立地やターゲット層によって適した方法は様々なので、具体的なプランについてはプロに相談してみるのがおすすめです。設計デザインだけでなくブランディングも合わせて構築することで、成功の可能性がアップします。