この記事は、すでに複数店舗を運営しており、次の出店や改装に向けて「店舗デザインをどう進めるべきか」を整理したい経営者・オーナー向けて書いております。 店舗デザインと店舗設計の役割の違い、手戻りや追加費用が起きやすい原因、費用や発注方式で失敗しないための判断軸を、実務視点で解説します。 

店舗デザインで成果が分かれるポイントとは 

意匠の良し悪しではなく「経営要件を満たしているか」 

店舗デザインで成果が分かれる要因は、意匠表現の完成度ではありません。
店舗設計によって運営が成立する条件を先に整理し、その条件内で店舗デザインを構築できているかが、成果を左右します。

 

店舗の売上や利益は、集客要因だけでなく、回転・提供・会計といった処理能力とオペレーションの安定性に強く依存します。 

 

店舗デザインと店舗設計は、意思決定の役割が異なる 

実務では、「店舗デザイン」と「店舗設計」が同列に扱われがちです。
しかし、両者は意思決定上の役割が異なります 

店舗デザインと店舗設計の役割整理(経営視点) 

区分 意思決定上の役割 該当要素の例
店舗デザイン 選ばれる理由の設計 外観、サイン、照明、素材、内装表現
店舗設計 運営成立条件の設計 動線、寸法、設備配置、待ち列処理

 

たとえば、 

 ・視認性やサイン計画は「どう見せるか」の判断であり、店舗デザインの領域 

 ・待ち列の処理やレジ前の滞留対策は「どう回すか」の判断であり、店舗設計の領域 

 

この切り分けが曖昧なまま進むと、好み・印象・過去事例ベースの議論になりやすく、判断が属人化します。 

役割を整理することで、再現性のある判断軸で意思決定しやすくなります。 

 

デザインと設計が影響する経営指標は異なる 

店舗デザインと店舗設計は、影響する経営指標が異なります
ここを混同すると、売上やコストが安定しにくくなります。 

各要素が主に影響する経営指標 

観点 主に影響する領域 補足
入店率 店舗デザイン 外観・視認性が判断材料になる
滞在満足 店舗デザイン 内装表現が体験評価に影響
回転率 店舗設計 動線・寸法が処理能力を規定
人件費効率 店舗設計 設備配置が作業量に直結

 

店舗デザインは、集客や購買行動の初期段階に影響します。
一方で、回転率や人件費効率といった利益構造に直結する指標は、店舗設計の影響が大きい傾向があります。 

 

つまり、店舗デザインは成果を伸ばす要素、店舗設計は成果を安定させる要素です。
この役割整理ができているほど、数値のブレは小さくなります。 

 

前提整理を欠いたデザインが経営上の負担になる理由 

店舗デザインが後から負担になるのは、店舗設計に必要な前提条件を固めないまま、意匠を先行して決めてしまう場合です。 

設備条件・寸法・動線が未整理の状態で進むと、図面・仕様・見積の整合が取れず、施工段階での変更や追加工事が発生しやすくなります。 

 

たとえば、照明計画を確定しても、天井懐に配線やダクトの余地がなければ、計画通りに実装できません。 

実務では、店舗設計で「実現可能な条件」を明確にしたうえで、その条件内で店舗デザインを検討する方が、コスト管理と完成度の両立につながりやすいと考えられています。 

 

店舗デザインの範囲が曖昧になると、なぜ手戻りが起きるのか 

ただし実務では、店舗デザインの役割を理解していても、プロジェクトが進む中で判断が曖昧になり、手戻りが発生するケースが少なくありません。 

原因は知識不足ではありません。
「どこまでを経営判断として固めるか」「どこから専門判断に委ねるか」という境界線が整理されないまま進む点にあります。 

 

内装デザイン・内装設計・施工の違い自体は、複数店舗を運営している経営者であれば、概念としては把握していることがほとんどです。 

それでもズレが生じるのは、店舗ごとに次のような前提が明確に共有されないまま進むためです。 

 ・回転・滞在・省人化のうち、どれを優先するか 

 ・入口や動線に求める役割をどう位置づけるか 

 ・清掃性やメンテナンス性を、どこまで制約条件とするか 

これらが曖昧な状態では、設計・施工側の判断軸がぶれやすくなります。

 

結果として、設計変更や追加工事といった形で、コストやスケジュールに影響が出やすくなります。 

すべてを外部に任せるのではなく、経営判断として固める論点を先に整理することが、店舗デザイン・店舗設計の精度を安定させるポイントになります。 

 

コンセプトは「世界観」ではなく「判断基準」 

店舗づくりにおけるコンセプトは、世界観を語るための言葉ではありません。
店舗設計と店舗デザインの判断を揃えるための基準です。 

この基準が弱いと、レイアウト(店舗設計)や素材選定(店舗デザイン)のたびに議論が振れ、結果として見積条件や仕様が揃わなくなります。 

 

コンセプトが弱いと、なぜレイアウトと見積がブレるのか 

コンセプトを「雰囲気」や「印象」の言葉で定義してしまうと、解釈が人や立場ごとに分かれやすくなります。 

たとえば、「気軽な雰囲気」という表現だけでは、照明・素材・席間・サインの判断が統一されません。 

 

その結果、 

 ・設計側は安全側で余白を取り 

 ・デザイン側は表現を広げ 

 ・見積条件は案件ごとに変わる 

といった状態になりやすくなります。 

 

コンセプトを「決定のルール」に変える 

一方で、コンセプトを経営条件として整理できていれば、判断は大きくブレにくくなります。 

 

たとえば、 

 ・回転を重視する 

 ・客単価は維持する 

 ・滞在時間は短めとする 

といった前提が共有されていれば、店舗設計は動線や席構成を、店舗デザインは素材や照明の方向性を、迷わず決めやすくなります。 

 

重要なのは、コンセプトをイメージ表現ではなく、「判断を揃えるためのルール」に置き換えることです。 

 

ターゲット・価格帯・滞在時間から逆算する 

判断に迷ったときは、ターゲット・価格帯・滞在時間に立ち戻ると整理しやすくなります。
この3点は、売上モデルとオペレーションを規定する前提条件だからです。 

回転を重視する場合 

 ・店舗設計:詰まりにくい動線、会計導線の明確化 

 ・店舗デザイン:迷わせないサイン、視認性を優先した照明 

滞在時間を伸ばす場合 

 ・店舗設計:席配置や音の反射などの環境条件 

 ・店舗デザイン:素材や照明による空間の落ち着き 

どちらが正しいかではありません。前提条件に合わせて最適化するだけです。 

 

判断基準が揃うと、意思決定は速くなる 

コンセプトが判断基準として機能すると、提案内容の比較や修正判断は格段に速くなります。 

 

結果として、 

 ・設計・デザインの手戻りが減り 

 ・見積条件が揃いやすくなり 

 ・意思決定の負担も小さくなります 

 

コンセプトは、表現を語るためのものではなく、経営判断を支えるための共通言語と捉えることが重要です。 

店舗デザインの費用は何で決まるのか|変動要因で捉える 

店舗デザインを含む店舗づくりの費用は、デザインの良し悪しだけで決まるものではありません。
設計・施工・設備の前提条件によって大きく変動します。 

 

特に飲食店では、設備条件が費用全体に与える影響が大きくなります。
同じ規模・同じ業態でも、物件の状態によって金額が大きく振れるのはこのためです。 

 

合計金額だけを並べて比較すると、 

 ・工事範囲 

 ・前提条件 

 ・含まれている仕様 

といった違いを見落としやすくなります。

内訳を確認し、「どこが変動要因か」を把握することが、 コストの使い方を判断する第一歩になります。 

 

上記を理解したうえで相場感を把握したいという方は、下記の記事にて、カフェや居酒屋といった飲食店の内装工事費を解説しております。 

カフェの内装工事費の相場を確認する。
 コラム『カフェの内装で重要なポイントは?費用やおしゃれに見せるポイントも解説』 

居酒屋の内装工事費の相場を確認する。
 コラム『居酒屋内装で集客力を高める!周囲と差がつく空間デザインと設計の工夫』 

 

費用が想定より膨らむ典型パターン 

費用が想定より膨らむ理由は、多くの場合、次の3点に集約されます。 

想定外コストが発生しやすい要因 

 ・店舗設計前提の不足:
  └電気容量、給排水、排気などの設備条件が未確定なまま進むケースです。
  ・仕様の未確定:
  └照明、素材、什器、サインが「仮」の状態で見積もられているケースです

 ・変更手続きの曖昧さ:
  └誰が承認し、いつまでに決めるのかが決まっていないケースです。 

 

たとえば、店舗デザインの方向性が定まっていても、使用する器具や素材が確定していなければ、見積金額は安定しません。  

想定外のコストを抑えるための考え方 

対策として有効なのは、次の3点です。 

 ・現地調査で設備条件を早めに固める 

 ・図面と仕様の確度を上げる 

 ・追加工事の扱いを契約前にルール化する 

 

これらを押さえるだけでも、想定外のコスト増加は発生しにくくなります。 

費用を見る際は、「何が未確定で、その結果いくら動くのか」という視点で整理することが重要です。 

 

デザイン・設計・施工は「一括」か「分離」か 

店舗づくりの発注方式は、方式の優劣ではなく運用で結果が決まります。

 

大きく分けると、次の2つです。 

 ・設計施工一括:デザイン・設計・施工を一社にまとめる 

 ・分離発注:デザイン/設計と施工を別で発注する 

 

重要なのは、自社の体制と判断スピードに合う方式を選ぶことです。 

 

まとめて任せる(設計施工一括)が向く状況と注意点 

設計施工一括の利点は、窓口が一本化される点です。
進行管理が単純になり、調整コストが下がりやすくなります。

 

一方で注意点もあります。 
設計(図面)と工事が同じ側にあるため、内容と金額を第三者視点で比較しにくいことです。 

向きやすい状況(判断基準) 

 ・社内の調整リソースが限られている 

 ・工期優先で、意思決定を早く回したい 

 ・設計変更の管理を一本化したい 

 

多店舗の改装が重なり、社内稟議や調整が詰まる時期は、窓口一本化の効果が出やすいです。 

 

リスクを下げる「事前整理」 

発注前に、次を言語化しておくことが重要です。 

 ・店舗設計の前提条件:設備条件/工事範囲/優先順位 

 ・見積の前提条件:含む/含まないの明文化(解釈ズレ防止) 

 ・コスト配分の方針:かける所/抑える所の合意 

 

分けて頼む(分離発注)が向く状況と注意点 

分離発注の利点は、条件を揃えて比較しやすい点です。
設計(図面・仕様)を固めた上で、施工を相見積できます。 

向きやすい状況(判断基準) 

 ・内容を丁寧に検討し、仕様を詰めたい 

 ・デザインや素材に明確な優先順位がある 

 ・複数社で施工条件を揃えて比較したい 

 

サイン・照明・什器の仕様まで統一し、工事費の差を「前提差」ではなく「実質差」で見たい場合に向きます。 

 

注意点 

施主側の調整負荷は増えます。
特に重要なのは、設計監理(図面どおりかの確認)を誰が担うかです。
この役割が曖昧だと、分離のメリットを活かせません。 

 

どちらを選んでも失敗しない共通ルール 

結論として、重要なのは次の2点です。 

① 見積の前提条件を揃える 

比較する場合は、次をセットで揃えます。 

 ・図面(レイアウト・設備) 

 ・仕様(素材・照明・什器・サインの扱い) 

 ・工事範囲(含む/含まない) 

 

前提が揃っていない金額差は、品質差ではありません。
単なる「範囲差」「未確定差」になりがちです。 

 

② 変更・追加工事の扱いを先に決める 

追加工事をゼロにするのは難しいです。

 

しかし、ルール化はできます。 

 ・いつまでに判断するか(期限) 

 ・何を根拠に金額を決めるか(単価・見積根拠) 

 ・誰が承認するか(承認者) 

 

この整理があるだけで、予算超過と工期ズレを抑えやすくなります。 

 

店舗デザイン会社の選び方|見るべきは実績より「成立力」 

店舗デザイン会社の比較で重要なのは、業態一致だけではありません。
規模感・単価帯・制約条件が近いかが、より重要です。 

 

同じカフェでも、客単価や滞在時間が違えば前提が変わります。
前提が違えば、店舗デザインも店舗設計も別物になります。 

 

写真の印象が良くても、予算や工期が現実的でない提案は運用に乗りません。 

確認すべき2点 

 ・自店に近い条件で「成立」させた経験があるか 

 ・設備条件・法規などの制約を踏まえた提案か 

店舗デザインは、成立して初めて価値になります。評価軸は「見た目」ではなく「成立力」です。 

 

提案にロジックがあるかの見極め方 

良い提案は、狙いと手段の因果を説明できます。 

 ・サイン計画で視認性を上げる(店舗デザイン) 

 ・動線を短くしピークを捌く(店舗設計) 

 

このように、狙い→手段→想定効果が分解されているかを見ます。 

世界観の説明が中心で、図面・設備条件・見積前提の説明が薄い場合は注意が必要です。 

 

打ち合わせでは、次を聞くと強度が見えます。 
「この判断は、売上・回転・人件費のどこに効く想定ですか?」 

 

内装業者について基本知識から振り返りたいという方は、こちらの記事をご参考ください。
内装業者の種類や内装工事のスケジュール、トラブル事例などを解説しております。 

コラム『内装業者の失敗しない選び方|費用相場・トラブル事例・探し方のコツ』を読む 

 

デザイン・見積を固める前に整理すべき前提 

①「削れない要素」と「妥協できる要素」 

最初に優先順位を切り分けると、判断が速くなります。 

削れない要素(主に店舗設計で担保) 

 ・席数や回転の考え方 

 ・提供動線・作業動線 

 ・安全・法規・設備条件 

 

妥協できる要素(主に店舗デザインで調整) 

 ・素材グレード 

 ・一部造作の仕様 

 ・什器の調達方法/製作範囲 

妥協は品質低下ではありません。
目的に対して、コストと工数を最適化する考え方です。 

 

②予算上限と調整余地の決め方 

予算は「希望額」ではなく、設計の前提条件として置きます。
次の2点をセットで決めると運用しやすくなります。 

 ・上限額:超えたら設計を見直すライン 

 ・調整余地:増減を許容する範囲 

 

設備条件で費用が振れやすい場合は、一定の予備費を見込む考え方が安全です。 

 

③オープン時期から逆算した意思決定スケジュール 

オープン時期がある場合は、図面確定の期限が最重要です。
図面が確定しないと施工は動けません。
後ろ倒しになるほど、工程が圧縮され品質リスクが上がります。 

 

意思決定は項目ごとに区切ると回しやすくなります。 

 ・レイアウト確定(店舗設計) 

 ・設備条件確定(店舗設計) 

 ・照明・素材・什器の確定(店舗デザイン) 

 ・発注内容の確定 

 

店舗づくりは、良い案を持ち続けるより、良い決め方をする方が成果につながりやすい領域です。 

 

店舗デザインを「経営判断」として進めるために 

店舗デザインは好みが入りやすい領域です。
だからこそ、感覚に委ねず判断軸を先に置きます。 

 

判断軸は、例えば次のような前提条件です。
ターゲット/価格帯/滞在時間/ピーク処理能力/必要席数/メンテ性。
これが整理されれば、提案は「好き嫌い」ではなく、目的適合で比較できます。 

 

感覚を排除する必要はありません。
感覚を、決め切るための言葉に置き換えることが重要です。 

 

店舗づくりを「感覚」から「判断」に変える 

コンセプト設計から店舗デザイン・設計・施工までの一貫支援 

店舗づくりで詰まりやすいのは、方向性が十分に整理されないまま検討が進み、後から店舗設計と見積の整合が取れなくなる場面です。 

初期段階で判断の前提が曖昧なまま進むと、設計の手戻りや追加工事が発生しやすくなるだけでなく、オープン後の運営効率や収益構造にも影響が残る場合があります。 

 

そのため実務では、早い段階で判断軸を揃え、設計・デザイン・施工を同じ前提で進めることが重要になります。 

こうした進め方を実務として成立させるためには、判断の前提を整理し、論点を切り分けながら進行を管理する役割が必要です。 

 

B.C.Worksでは、コンセプト設計から、店舗デザイン、設計、施工までを一貫して支援しています。 

ターゲットや価格帯、滞在時間といった経営としての前提条件を先に整理し、設備条件や法規、施工上の制約といった技術的な前提を確定させておくことで、デザイン案や見積を「前提に合っているかどうか」で判断できる状態をつくります。 

その結果として、設計の手戻りや追加工事のリスクを抑えつつ、運営まで見据えた店舗づくりに寄せやすくなります。 

【無料】店舗づくりの前提整理の段階から相談する 

 

まとめ|店舗デザインは「体験」、店舗設計は「成立」をつくる 

店舗デザインは、体験価値を通じて選ばれる理由を形にします。
店舗設計は、動線・設備・法規・施工性を整理し、運営を成立させます。 

 

順序としては、店舗設計で作れる枠を固め、その枠の中で店舗デザインを磨く
これにより、手戻りや想定外のコストを抑えやすくなります。 

 

B.C.Worksでは、コンセプト設計から、店舗デザイン・設計・施工までを一貫して支援しており、図面・仕様・見積が同じ前提で判断できる状態づくりを行っています。 

「今の検討の進め方で問題ないか」「判断軸が揃っているか」を確認したい段階であれば、いきなり発注に進む前に、前提整理や方向性の壁打ちから検討することも一つの選択肢です。 

【無料】まずは専門家に、店舗計画の方向性を相談する 

 

ご相談前によくいただく質問を、下記にまとめています。 

あわせてご参考ください。 

B.C.Worksに関するよくあるご質問