内装設計とは?業界別の内装設計のポイントと進め方・費用を解説

内装設計とは?業界別の内装設計のポイントと進め方・費用を解説

Column

2025.12.01

内装設計は、店舗・オフィスを問わず「売上」「業務効率」「体験価値」を左右する経営要素です。
見た目の良さだけにとどまらず、目的・導線・コスト構造をどう設計するかが成果を大きく左右します。本記事では、飲食・美容室・オフィスなどの業態別のポイントから、費用構造、A/B/C工事、よくある失敗までを体系的に解説します。
新規出店や改装に向け、判断軸を持ってプロジェクトを進められる状態になることを目指しています。

知っておきたい「内装設計」が果たす役割

内装設計は、店舗では売上・回転率・顧客体験に、オフィスでは生産性・心理的安全性・コミュニケーションの質に影響し、売上・作業効率・顧客体験といった事業成果に直結します。

内装設計がこうした指標に影響する理由は、空間設計が「行動・導線・判断コスト」に作用するためです。例えば、飲食店の席配置は回転率を左右し、オフィスのレイアウトは集中・協働のバランスに影響します。
どの業態であっても、まずは「なぜ空間を変えるのか」=目的の定義が起点になります。

 

内装設計が果たす主な役割(店舗・オフィス共通)

以下は、空間ジャンルを問わず共通する役割をまとめたものです。

役割 内容 一例(イメージ)
ブランド体験の統一 世界観・印象を一貫させ、選ばれる理由を強化する たとえば、店舗の素材や照明をブランドカラーに合わせ、SNSでの印象を統一するなど
行動導線の最適化 訪問者や従業員の動きを整え、離脱防止や効率化につなげる 店舗の入口→レジの導線が自然で、迷わず行動できる状態
生産性・効率の向上 働き方の特性に合わせた空間設計で、集中・協働の質を高める オフィスに個室ブースを追加し、オンライン会議の生産性を向上
滞在体験の向上 心地よさ・安心感・没入感を高め、満足度や再来率に影響する 素材や照明で「落ち着く空間」を演出し、滞在単価の向上を狙う

 

店舗の内装設計が売上・回転率・体験価値に影響する理由

店舗の内装設計は、以下の要素を通じて売上構造と直接結びつきます。

店舗の内装設計が売上に影響する4つの要素

特に店舗では、以下の4つの要素が売上構造に直結します。

要素 影響する指標 一例(イメージ)
導線 離脱率・購買率 入口からメニュー看板・レジまで自然につながる導線で注文率が上がる
席数 回転率・客単価 回転率が落ちない配置にすることで、ピーク時間帯の売上が安定する
視認性 入店率 ファサード(店先)の見え方や看板配置で「入りやすさ」が向上
待ち時間の体験設計 顧客満足・再来率 行列時も説明パネルや動線でストレスを軽減し離脱を抑える

こうした設計要素はすべて店舗の売上構造と連動するため、内装設計は“経営の一部”として捉える必要があります。

 

オフィスでは快適性・集中/協働バランスの設計がカギ

オフィスの内装設計では、従業員が「どの業務を、どの場所で行うか」の選択性が生産性を左右します。

オフィスの内装設計が生産性に影響する主な要因

生産性を決めるのは「どの業務をどこで行うか」という選択のしやすさです。

その選択を支えるのが以下のような設計要素です。

要因(観点) 内容 一例(イメージ)
ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング) 業務に合わせて働く場所を選べるようにする考え方 集中作業は個室ブース、協働はカフェスペースなど使い分け
音・オンライン会議環境 雑音やハウリングが集中力を下げるため、専用スペースが必須 Web会議用の防音ブースを増設
交流導線 偶発的なコミュニケーションが生まれやすい配置がチーム力を高める チームごとに軽いミーティングができる「中間エリア」を設置

リモートワークが定着した現在では、単なる“おしゃれ”ではなく、業務成果と結びついた空間づくりが求められています。

 

内装設計の進め方ロードマップ|失敗しない準備と流れ

内装設計には「企画 → 設計 → 見積 → 工事 → 引き渡し」という明確なプロセスがあります。

この流れを理解しておくと、不要なトラブルを回避しやすく、工期やコストのブレも最小限に抑えられます。

特に最初の“目的定義”が明確であるほど、設計・見積・施工のすべてがスムーズに進みます。

 

把握しておきたい全体フロー

以下は、店舗内装・オフィス内装のどちらにも共通する工程を整理したものです。

ステップ 内容 ポイント/一例
① 目的定義 何のために空間をつくるのかを明確化 たとえば「回転率改善」「ブランドイメージ統一」「集中ブース増設」など
② ゾーニング・導線計画 空間をエリア分けし、動き方・使い方を設計 店舗なら入口→商品→レジ、オフィスなら集中→協働の切り替え導線
③ レイアウト・デザイン検討 色・素材・照明・家具を選び、空間の印象を決定 おしゃれ見えだけでなく、店舗では視認性、オフィスでは集中/協働の質が重要
④ 見積と工事区分確認 A/B/C工事の範囲を確認し、見積の妥当性を判断 特にB工事は指定業者制で費用とスケジュールに影響
⑤ 施工・品質管理 図面通りか、設備の動作、法規対応をチェック 消防設備・避難経路・電気容量などは共通の重要ポイント

 

ステップ1:目的定義と要求仕様の整理

最初に、ブランドコンセプト・ターゲット顧客・既存の課題・求める効果を整理します。
ここが曖昧だと、後工程すべて(設計・見積・施工)の判断基準がぶれ、工事中の変更が増えやすくなります。

整理すべき主な要素

・ブランドイメージ(世界観・トーン)

・想定顧客(来店理由・利用シーン)

・解決したい課題(回転率/作業効率/席数不足など)

・期待する成果(売上向上・滞在時間の改善・生産性向上など)

 

一例として、カフェなら「滞在時間を最適化して回転率を改善する」、オフィスなら「集中作業スペースの不足を解消する」といった形で目的が決まると、後工程が明確になります。

 

ステップ2:ゾーニングと導線計画

ゾーニングとは、空間を用途ごとにエリア分けし、利用者の動き方(導線)を設計する工程です。

店舗・オフィス共通で、導線は以下に影響します。

・店舗:入店率・購買行動・回転率・待ち時間の快適性

・オフィス:集中度・協働・コミュニケーションの質

 

ゾーニングが固まると、内装設計の方向性(おしゃれさ・インテリア要素・素材の使い方)も決まり、全体の骨格が整います。

たとえば、店舗なら「入口→商品棚→レジ」が自然につながるように配置し、オフィスなら「集中→協働→休憩」がストレスなく切り替えられる構造にします。

 

ステップ3:レイアウト・デザイン検討

ここでは、空間の印象を決定する要素(色・素材・家具・照明)を選定します。
おしゃれさを追求するだけでなく、機能性と経営メリットを両立させる視点が重要です。

デザインが影響を与える主な領域

・素材感:滞在時間・安心感・空間の質の印象

・照明:回遊性・集中度・商品の見え方

・家具配置:視認性・席数・生産性

・色:ブランドイメージ・心理的効果

 

たとえば、飲食店では“照度の高低差”が滞在時間に影響し、オフィスでは“タスクライトの有無”が集中度を左右します。

 

ステップ4:見積取得と工事区分(A/B/C)確認

見積段階では、A工事・B工事・C工事の区分を必ず確認します。
区分によって“誰が施工し、どこまでが費用負担になるか”が変わるためです。

特にB工事は貸主側の指定業者が施工するケースが多く、

・見積の妥当性

・スケジュールの自由度

・コスト最適化の可否

 

に直接影響します。

 

ステップ5:施工・品質管理

施工段階では、以下の点を重点的に確認します。

・図面との整合性

・仕上げの品質(傷・歪み・素材の色味など)

・設備の動作確認(空調・電気・給排水)

・消防設備・避難経路などの法規対応

 

これらは店舗内装・オフィス内装どちらにも共通する基準で、引き渡し後のトラブル防止につながります。

 

 

業態別内装設計のポイント(飲食・美容室・オフィス)

飲食店・美容室・オフィスでは重視すべき設計思想が大きく異なります。
目的・利用行動・滞在時間が異なるため、求められる内装設計の基準も変わります。
この違いを理解しておくと、自社に最適な内装設計を選びやすくなります。

 

業態ごとに異なる“内装設計の優先ポイント”

以下は主要3業態の特徴を整理した比較表です。

業態 重視する要素 空間設計で影響する指標 一例(イメージ)
飲食店 回転率、厨房導線、席配置、視認性 売上/提供スピード/客単価 厨房導線を短縮し、ピーク時の提供速度を安定させる
美容室 滞在時間の快適性、照明、音環境、スタッフ動線 リピート率/満足度/生産性 セット面とシャンプー台の距離を近づけ、移動負荷を軽減
オフィス ABW、集中・協働のバランス、オンライン会議環境 生産性/コミュニケーション量/心理的負荷 防音ブースで会議の質を上げ、集中エリアと動線を分離

飲食店:回転率・厨房導線・席配置の最適化

飲食店の内装設計は、回転率・厨房導線・席数が売上に直結します。
ホールと厨房の動線が短いほど提供スピードが安定しやすくなり、ピーク帯でもオペレーションの乱れが起きにくくなります。

飲食内装で特に重要なポイント

・厨房導線:調理→提供→片付けが最短で完結すると提供スピードが安定

・席配置:席間距離で滞在時間に影響し、回転率調整が可能に

・視認性:入口からメニュー・レジが見えやすいほど入店率が高まりやすい

・ブランド体験:照明・素材・色で“おしゃれな店舗デザイン”を統一

 

ファストフード店では「席数最大化 × 導線のシンプル化」で回転率を維持し、カフェでは照度を落とし滞在時間を長くするなど、目的によって内装が変わります。

 

美容室:滞在時間の快適性・動線の短縮・リピート設計

美容室は滞在時間が長いため、快適性スタッフ動線が空間設計のカギになります。
照明の眩しさ、座席間の距離、音環境などの細かい要素が満足度に影響します。

美容室内装の主な観点

・照明:肌・髪色が自然に見える色温度がリピート率に影響

・距離感:セット面間の距離やパーソナルスペースで居心地が変わる

・スタッフ導線:シャンプー台までの動線が短いと作業効率が向上

・音環境:BGMや機器音の調整で落ち着き感をつくれる

 

シャンプー台を奥にまとめることで「静けさ」を演出し、セット面の配置で視線が交差しにくい工夫を施すなど、内装で顧客体験が変わります。

 

オフィス:ABW・コミュニケーション動線・集中環境

オフィスでは、働き方に合わせて「どの業務をどこで行うか」を選べる空間設計が求められます。
ABW(Activity Based Working)の考え方が広がり、集中・協働・オンライン会議の3つを使い分けられるデザインが重要です。

オフィス内装で重視すべきポイント

・ABW設計:業務に応じて場所を選べる仕組みが集中度と生産性を向上

・コミュニケーション導線:偶発的な交流が生まれる配置でチーム力が向上

・オンライン会議対応:防音ブースや個室で会議の質を安定化

・集中環境:動線と離した位置に集中ブースを置くことで雑音負荷を軽減

 

オープンスペースだけで運用すると会議も雑談も混ざってしまうため、会議用ブース・集中席・コミュニケーションエリアを分ける設計が一般化しています。

 

内装設計の費用と坪単価|コスト構造の理解が失敗を防ぐ

内装費用は、業態・規模・素材・設備・物件のコンディションによって大きく変動します。
坪単価だけで比較してしまうと、設備条件の違いや物件特性が見えにくく、誤った判断につながる可能性があります。
特に店舗内装やオフィス内装では、B工事(指定業者による工事)は指定業者で相見積もりが取りにくく、単価や工事範囲の判断が難しいために、費用差を生みやすいので注意が必要です。

 

坪単価の目安(店舗・オフィス別)

内装の坪単価は「何を、どこまで工事するか」で大きく変わります。
物件条件や設備状況で大きく変動するため、以下はあくまで一般的な参考値です。

店舗・オフィスの坪単価イメージ

業態 坪単価の目安(参考) 幅が生まれる主な理由 一例
飲食店 設備量が多いため比較的高め 厨房設備・給排水・換気・ダクト工事 厨房区画を広く取ると設備工事が増え坪単価が上昇
美容室 中間帯 給排水の数・照明量・セット面造作 シャンプー台の数で給排水工事量が変動
オフィス 範囲により大きく変動 造作壁の量・配線・会議室の数 会議室を増やすほど防音工事や配線工事が増える

例えば天井高調整や設備容量の増設が必要になる場合、数十万円単位の差が生まれます。

 

コストが変動する要因(素材/設備/物件条件)

内装費用を理解するには、どの要因が工事範囲に影響しているかを把握することが重要です。

コスト変動の主な要因

要因 内容 一例
素材 仕上げ材の種類・耐久性で大きく変動 塗装仕上げより木材パネルの方が高い、耐久性の高い床材は単価が上がる
設備 給排水・電気・空調など、設備量で費用が増減 給排水の移設が必要だと工事範囲が拡大
物件条件 天井高、電気容量、既存設備の状態など 天井を抜く場合、スケルトン状態の調整費が発生
レイアウト量 造作壁・什器の多さで変わる 会議室を増やすと造作壁+防音工事が追加

結論として、坪単価は“結果”であり、“構造(要因)”を理解しないと比較できないという点が重要です。
特に店舗内装では給排水・換気・ダクトなど設備工事の有無で10〜30万円ほど差が生じることもあります。

 

工事区分(A/B/C)による費用への影響

内装費用を大きく左右する要素が、A工事・B工事・C工事の区分です。

工事区分と費用判断のポイント

区分 施工者 費用負担 特徴
A工事 貸主側(オーナーまたは管理会社の手配業者) 貸主側 共用部や建物設備に関わる工事。テナント側では仕様をコントロールしにくい
B工事 貸主指定業者 テナント(負担が発生するケースが多い) 指定業者のため費用比較が難しく、金額差が出やすい
C工事 テナント側が選定した業者 テナント 範囲が明確で仕様調整や比較がしやすい

特にB工事は、見積の透明性やスケジュールに影響しやすいため、早期確認が重要です。

 

よくある失敗と対策|事前準備で防げるポイント

内装プロジェクトでつまずきやすいのは、見積比較・導線設計・法規/物件調整の3点です。いずれも事前にチェックポイントを押さえておけば、追加費用や工期遅延を未然に防げます。

まず押さえておきたい「3つの失敗パターン」

特に次の3つは、初めての内装プロジェクトで起きやすい代表例です。

よくある失敗 なぜ起きるのか(要因) 主な影響 防止策(ポイント)
見積の比較軸が曖昧 仕様読み違い/工事区分の認識差 追加費用・再見積で工期が延びる 比較表で“範囲・仕様・工事区分”を明確化
デザイン先行で導線・収益性が崩れる 目的定義が曖昧/席数・導線の検証不足 回転率低下・作業効率悪化 設計段階で「目的 × 導線 × 収益性」をセットで確認
物件側調整・法規対応の見落とし 消防・設備・貸主側仕様の確認不足 追加工事・工期延長・レイアウト変更 早期に物件仕様を確認し、法規要件を反映させる

 

見積の比較軸が曖昧でトラブルになる

内装見積は、項目や名称の違いで“同じ仕様に見えて実は範囲が異なる”ことが少なくありません。
特に工事区分(A/B/C)の認識差があると、追加費用の発生につながります。

防ぐためのポイント

・比較表で「仕様・数量・範囲」を揃えて並べる

・工事区分(貸主側/貸主指定/テナント側)の差を明確にする

・あいまいな項目は必ず事前に確認する

 

一例として、給排水の移設がA工事扱いなのか、B工事になるのかで費用が大きく変わる場合があります。

 

デザイン重視で導線・収益性が崩れる

見た目を優先しすぎると、厨房導線が長くなる/席数が減る/視認性が落ちるなど、売上や作業効率に影響が出るケースがあります。

防ぐためのポイント

・「おしゃれ」「雰囲気」だけで判断せず 目的と経営指標に照らして確認

・店舗:回転率・視認性・席数を同時に検討

・オフィス:集中・協働のバランス、オンライン会議のしやすさを検証

 

たとえば、カウンターを広くしすぎると席数が減り、ピーク時の売上が落ちる可能性があります。

 

物件調整・法規(消防/設備)を見落とす

物件の仕様や法規は、設計・見積・工事に直接影響します。
貸主側で定められた設備条件や、消防/電気/空調の基準を見落とすと、追加工事やレイアウト変更が発生しやすくなります。

防ぐためのポイント

・物件の仕様書・設備容量・消防設備を初期段階で確認

・貸主側のルール(指定業者・工事時間帯など)を把握

・法規(消防・避難経路・電気容量)を設計に反映

 

B.C.Worksでは、物件側との調整や法規チェックを含めてサポートしています。

 

B.C.Worksが提供できる内装設計における強み

B.C.Worksは、新規出店やリニューアルにおける“個店最適の内装設計の提案” を得意としています。

利用シーン・ブランド体験・物件条件を踏まえ、その店舗やオフィスに最適なレイアウトと内装設計を構築します。

B.C.Worksの強み

・1店舗ごとのブランド体験を高める内装提案

・物件条件(天井高・設備容量・形状)を踏まえた最適レイアウト

・KPI(売上・回転率・業務効率・生産性)を起点とした空間設計

・テナント側が“どう見られたいか・どう使いたいか”に合わせた個別デザイン

・出店エリア・物件取得から相談できる体制

 

同じブランドでも、物件の形状に合わせて厨房導線や席配置を変え、店舗ごとの最適な空間価値をつくるといった対応が可能です。

 

まとめ|内装設計は“目的・導線・コスト”で成果が決まる

内装設計の成果は、目的の明確化・導線設計・コスト構造の理解という3つの軸によって大きく変わります。
この3点が整理されていると、見た目の良さだけでなく、売上・生産性・業務効率といった経営指標を改善できる設計につながります。

また、物件ごとの条件(設備容量・天井高・工事区分)や業態の特性に応じて判断軸を持つことで、無駄のない意思決定が可能になります。
結果として、納得感のある空間づくりと、長期的なコスト最適化につながります。

「業態 × 物件条件 × 目的」によって、内装設計の答えは大きく変わります。

「自社の場合はどう考えればいいのか」を整理したい方は、B.C.Worksへお気軽にご相談ください。

物件調査や工事区分の確認から、設計の方向性づくりまで、初期の検討段階から伴走いたします。